九月 子芋の煮物

 今月から「今夜はご馳走」がテーマ。美味しいもので心が満たされれば、どんなものでもそれが「ご馳走」。俳句では芋は里芋。八ツ頭、海老芋と形もいろいろ。親芋から子芋たくさんというのも縁起が良い。煮ればもろもろの味が沁みこみ、噛み心地のある柔らかさは美味しさのもと。「衣被」や「芋の煮ころがし」あるいは「お芋さん」、里芋をめぐる言葉は、丸く愛らしい形と深い味への有難みの故だろう。里芋は、家庭の味から京の料亭、各地の芋煮会までおそらく日本人の味の原点のひとつに違いない。

山の味海の味沁む子芋かな 越智淳子