二月 バレンタインチョコレート


2月14日バレンタインデー、かつて、その課で年長女子だった責任感か?課内の男性たちにチョコレートを配ると、「ああ、これで家に帰れる!」と喜ばれた。義理でも本気でもチョコレートはやはり美味しい。最近では、自分自身に贈る人も少なくないらしい。店頭に並ぶ美麗、美味なチョコの数々。自分にも…と思うのは自然な流れ…かもしれない。

バレンタインデー自愛のチョコの苦甘し 越智淳子


一月 花びら餅
 
お正月、お年賀の熨斗をかけた手土産で年始回りの人も多いだろう。熨斗、奉書、懐紙、袱紗、風呂敷・・日本人が「包む」ことにとりわけこだわる、あるいは心をこめるのは、和紙や織物の豊かな伝統の故もあるだろうが、おそらく「包み」を開ける時の相手を想うときめき故でもあろうか。そして、ときめきはひそかでありたい。茶道の初釜のお菓子「花びら餅」もまた、新しい年へのいろいろな祈り、願いをひそかに包んでいる。

めでたさをかさねてつつみ花びら餅 越智淳子


十二月 クリスマスケーキ
 
長崎出島のクリスマスはオランダ冬至と呼ばれたそうだ。夜が最も長い冬至、でもその翌日からは日が、光が刻々と伸びてくる。キリスト教国とは言えない日本で、クリスマスの祝い方は一頃に比べだいぶ落ち着いてきたが、クリスマスケーキは、これからも一番待たれる物。誰が誰のために作るかあるいは買うか?目を輝かせる子供たち。寒い冬に心温もるクリスマス。

着ぶくれの車内でかばふケーキ箱 越智淳子


十一月 もみじ饅頭
 
もみじは、日本の意匠に実に頻繁に使われる。着物、小物、陶磁器、漆器等々、儀式から日常まで、もみじが描かれるのは、その葉の繊細な美しさゆえ。錦秋といえば紅葉が主役。もみじのような手といえば、愛らしい赤ちゃんの手だが、これは新緑のもみじだろう。写真の箸置きは緑と紅紫で季節を問わず使えるというのも、もみじデザインの強み。もみじが饅頭の形になれば、繊細さはやや減るものの、ほっこりと美味しい。

もみじ饅頭つかむ嬰の手お茶の刻  越智淳子


十月 モンブラン

 アルプス最高峰(4810m)のモンブラン、その名にちなんだ元のフランス菓子は「栗のモンブラン」だったらしいが、1930年初頭、日本でも創られ始め、今では全国的に定着。手ごろなサツマイモもわるくないが、やはり栗!最近では姿もいろいろ、とはいえ、山に見立てた形は不滅。長い歳月と各地のモンブランにまつわる話を積み上げれば、優に山の高さを越えるかもしれない。

向き合ひて思ひ出語らんモンブラン 越智淳子


九月 お月見団子


まんまるい、まんまるな・・このことば、発するだけで自然に笑みがこぼれてくる。まんまるい‥対象に既に愛らしさを感じているからだ。まんまるな十五夜月に、さらにまんまるな団子や衣被を供える人の心もまた、愛らしい。

お月見や団子見惚れるこどもたち  越智淳子